泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─
「は、はい。国王陛下。御用でしょうか」
「母親に似てきたな」
母の代から長年王女付きのメイドとして働いているが、国王直々に声をかけられたのは初めてだった。
メイドのステラが立ちすくんでいると、ステラの華奢な顎にキドナ国王の皺枯れた指先がかかった。
顎を上げさせられて国王の捕食者の目に舐められると、ステラは身が竦んだ。
「お父様、ステラで遊ぶのは後にしてちょうだい。私の婚約の話はどうなるの!」
「このステラこそが、お前の婚約に一役買うのだ」