喫茶店の悪魔

どうしようもなく嫌だったのに


ひとつベッドの上で、男性と寝てしまった。

何故か今更、ものすごく恥ずかしくなる。

でも、相手側が倒れてきたからだ。仕方ないことなんだぞと自分に言い聞かせる。


「はぁああ…」


大きなため息を吐いてシャワーから上がり、ドライヤーで髪を丁寧に乾かす。生まれつき量も多いし、面倒くさくて大変だ。

洗面所の時刻が目に入る。初めて洗面所に時計があることを知る。リビングには時計はないのに、ここにはあるのか。

時刻は11時を過ぎている。

こんなに時間経ってたんだ。


最後に髪を緩く結んで扉を開くと、いい匂いが飛び込んできた。

なんか料理作ってくれたのかな。

胸が高まったが、部屋を見てすぐに沈む。


綺麗に頭を付けて、土下座をする天さんがいたのだ。


は?なにしてんの?ポカンと口を開ける。


「ごめんなさい。」

「え、いやどうしてですか。」

「料理しながら色々考えてたんだけど。ベッドに俺が上に倒れてきてってさ…。澪、絶対怖かったろ…?急に男の人来るとか」


そんなに、心配してくれるんだ。

正直、本当に怖かった。昔のセクハラの件もあって、恐怖で震えていた。

大丈夫だと思えたのは、きっと、天さんだったからなんだとこの瞬間に理解した。

体調面で倒れたから大丈夫だと思えた訳でもない。この人はそんなことをしないと私自身で思えたからだ。
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