喫茶店の悪魔
失恋でもした?
前のバイトというのは、私が近くのカラオケ店で働いていたときのことだった。
16歳の時、1年前のことだ。
歌い終わったお客さんの部屋の後を机を拭いたり、マイクを丁寧に消毒している時。
「東條さーん」
わざわざこちらの部屋へ来て、20代の男性の先輩に呼ばれた。私は手を止めて、「はい」と頷く。
……ちょうどあの金髪さんの年齢くらいの人。
「ごめん、ちょっとこっち手伝ってくれない?」
店長や他の先輩から、「カラオケ店は時間が大事だから1人ですぐに片づけるように」と口酸っぱく言われていた。
なのにこのしっかりした先輩が…?
そんなに何か飲み干したグラスが多かったりするんだろうか。
そういったお客さんはいるけれど……
「…2人でですか。そんなに大変なんですか」
「…はぁーあ、大変なんだよ。早く来い」
急に口調を変わり、圧に逆らえなくなった。来いという先輩の後をついていくことにした。
鍵付きの部屋へ入る。
2人だけの空間に包まれ、どこか緊張が走る。確かにグラスはあったりしたけれど、2つや3つだ。すぐに終わりそうなのに……なんで?