Fortunate Link―ツキの守り手―




翌日の朝。



登校した生徒が次々と席に着く。

ざわざわと騒がしい教室。


「はぁぁぁ…」


朝のHR前。

俺は自分の席で、盛大に溜息をついて頭を抱え込んだ。


「どうしたんだ、シュン」

そう云って肩を叩いてくるのはクラスメイトの高畑聡(タカハタ サトシ)。


そういえばまだ名乗ってなかったけど、俺の名前は、守谷俊(モリタニ シュン)

皆からはフツーに「シュン」って呼ばれている。


「……何悩んでんだ?」


サトシは首を傾げながら訊いてきた。

と言っても心から心配している顔ではない。

単なる興味本位な感じ。

奴の顔には万年お気楽な相が出ている。


俺は顔をうずめたまま、


「――自分の存在意義について…」


呟いた。


俺こと守谷俊は、見ての通りごく普通の男子高生をしているわけだが。



実はその正体は――、

ごく平凡な日常に融け込んで生きる忍であった。


忍者なんてこの平和な現代に居る訳ない。
漫画か時代劇にしか出てくるわけねーだろ。
たわけなこと抜かすな。

と大半の方はお思いだろう。


だがしかし、様々な形に変えてこの現代にも忍は存在する。

要人の護衛、特殊治安部隊、国家お抱えの情報機関…云々。



そして俺は――、

『”ツキ”を持つ幼馴染、月村明月を守ること』

それがこの身に負う使命なのだ、と親に教え込まれて生きてきた。


その為に幼い頃から、親にしごかれ、鍛えられて育ってきた。

あらゆる武術、戦術の修得、厳しい精神鍛錬。

それらを乗り越えてきて今の俺がある。


それらを乗り越えてきて今の俺があるというのに…。

今の俺は――、

今の俺はっ……



「…このままじゃずっと出番無しじゃねぇかよ!」


がばっと顔を上げ、頭を抱えて叫んだ。

< 4 / 573 >

この作品をシェア

pagetop