18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~

 保健室を出て校舎裏の中庭を通って西門に向かう。中庭に目をやると、花壇のところで園芸部の人たちが汗だくになりながら作業をしているのが見えた。

 セミの音がうるさく鳴り響く中、私と長門先生は無言だ。

 ものすごく、気まずい。


 ちらりと横目で長門先生を見ると、彼はまっすぐ前を向いてなぜか微笑んでいた。

 そういえばこの人、私の写真を撮っていたんだよね。

 そのことを思うと、怖いし、気持ち悪い。

 一体どんな気持ちでそんなことをしていたのだろう。

 聞いてみたい気もするけど、やっぱり怖い。


「あれから体調はどう?」

 突然声をかけられて、びっくりして「えっ」と声を出して彼を見た。

 相変わらずにっこりと微笑んだまま、彼は私に目を向けている。


「えっと……大丈夫です。ご心配をおかけしました」

「そう、よかった」

 なんだか、妙な会話だなあって思う。

 私が遥さんと別居していることを、この人は知っているのだろうか。

 結局、表面上の会話をしただけで西門に到着した。


「あの、ありがとうございました」

「それじゃあ、気をつけてね。秋月いろはさん」


 どきりとした。

 またフルネームで呼ぶなんて、これ、わざとだよね。

 含みのあるような笑い方をする長門先生に、これ以上関わりたくないのでぺこりとお辞儀をして、足早に立ち去った。


 あまり、彼の顔を見ないようにした。

 だって、目が合うとまるで威嚇されているような気分になるんだもの。

 笑顔の裏が怖いと思うのは遥さん以上だと思った。



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