18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~

26、絢と朝陽

< 絢 >

 中庭を歩いていたら、ひとりの女が座り込んで泣いていた。

 面倒だなと思ったが、怪我をしているようなので放置してはおけない。

 とりあえず、声をかけた。


「君、大丈夫?」

 すると、女はぶわっと涙を流して嗚咽をもらした。


 おいおいそんな泣くほどの怪我かよ、と絢は胸中で呆れぎみに呟いた。

 彼はすっと手を伸ばし、声をかける。


「立てる? 保健室で手当てしてあげるから」

「う、うう……」

 女はただ手を伸ばした。

 絢はその手をつかんで彼女を引っ張り上げる。


 見事に両膝から血を流していた。

 絢は女を保健室に連れていった。


 結構派手に転んだのだろう。膝全体にぱっくりと皮膚が開いていた。


「い、痛いぃー……」

 消毒をすると女は泣きながら声をもらした。


「とりあえず応急処置だから。化膿したり酷くなったら病院へ行って」

「……ありがとう、ございます」

「しばらく休んでいってもいいよ」

「はい、じゃあ……」


 そう言って、女はソファに腰を下ろしてしまった。

 ほんとに休むのかよ、と絢は胸中で舌打ちした。

 ここは礼を言ってすぐに立ち去ってくれるほうがありがたいのに。


 絢が自分のコーヒーを淹れていると、女がじっとこちらを見てきたので、一応訊ねてみた。


「君も飲む?」

「いいんですか? いただきます」


 断れよ、と内心思ったが、絢は渋々彼女のコーヒーを淹れた。



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