18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~

7、彼の裏の顔


 そこは暗い一室だ。

 彼は照明を点けずにベッドに腰を下ろしていた。

 大きな窓の外にはまばゆいばかりの夜景が広がる。


 窓からの月明かりだけで、彼は酒を飲むことを好んだ。

 彼はワインをひと口飲むとグラスをサイドテーブルに置き、視線を遠くへ投げた。

 その先には棚があるが、薄暗い室内ではそこに何が置かれているのか定かではない。


「面倒な女だな」


 彼はぼそりと呟いた。

 そのタイミングでスマホが着信音を鳴らし、彼は落ち着いた様子で電話に応答した。


「ああ、(あや)か」


 相手の話に対し、彼はふっと笑みを浮かべた。

 しばらく相手の話を聞いていたが、彼はやがて思いついたように口を開いた。


「絢、お前に頼みたいことがある」


 相手は少しばかり声量を上げた。

 彼は落ち着いた表情で話す。


「間宮由希という女、監視してくれる?」


 相手は少し躊躇したようだが、そのことについて深く訊ねた。

 彼はそれに答える。


「別に何もしなくていい。ただ、注視しておいてほしいだけだ」


 相手は冷静にそれを了承したようだった。

 彼はひとりごとのようにぼそりと話す。


「すべて上手くいっているのに、邪魔だけはされたくないからな」


 それを聞いた相手は軽く笑い、その声がこちらにまで聞こえてきた。


 その夜の月は満ちておらず、少しばかり欠けていた。

 彼は窓からそれを目にして、口もとに笑みを浮かべていた。



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