お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する
逃げない





「勇運はね、子供が嫌いなんだよ
特に君の弟くらいの年齢の子が、

許せないんだ――」




守人さんから、勇運くんの事を聞いて数日が経った。

あれほど金曜日に「月曜日に絶対に勇運くんと話をする」と意気込んでいた私だけど、週が明けても……その意気込みは、不完全燃焼のままくすぶっている。


「嫌い、って言われたらね……」


いくら私が勇運くんに近づこうとしたって、勇運くんが私の弟・夏海を嫌ってるんじゃ仕方ない。

夏海を見ただけで、震えるくらい怒って、帰ってしまった勇運くんだ。


「それに……”嫌う”だけじゃなくて、”許せない”んだもんね」


勇運くんが、どうして子供を嫌っているのか。それは聞く事は出来なかった。守人さんも、それ以上は話せない雰囲気を醸し出していた。

私が「どうして嫌いなんですか?」と理由を聞いたら、優しい守人さんは答えてくれるかもしれないけど……無理やり聞く事はしたくない。
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