お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する


あ、終わった。



その時、プツンと感情の糸が切れた。ハラハラと、涙が溢れてくる。

私は、どうして早く逃げなかったんだろうと……遅すぎる後悔を繰り返した。


逃げる……、そう言えば。


学校でも、そう言ってくれた人がいた。



――早く逃げろよ
――お前、危ないぞ



あれは、誰だったっけ。

まるで「こんな私の姿」を知っているような言い方をした人。



――――これ以上、刺されんなよ



あの人は……誰だったっけ。



「冬音」

「ッ!」



成希の声で、一気に現実に引き戻される。

そうだ、私は……

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