お巡りさんな彼と、その弟は、彼女を(密かに)溺愛する
「一緒に救急車の中に入ってくれるかい? 勇運くん」

「……おじさん」

「うん?」

「聞いてほしい事があります」

「……」

「……」


しばらく、おじさんと目を合わせたままだった。

だけど、一度も視線を逸らさなかった俺を見て――おじさんは、ゆるりと頷く。


「冬音に関係ある事だね。もちろん聞くよ」

「ありがとうございます」


三石を、救急車のストレッチャーに寝かせる。救急隊の人が「三石さんー、聞こえますか」と声を掛けながら、怪我がないか調べていた。そして「異常なし」と。その声を聞いた時、俺も口を開く。



「実は俺――」



そして、ずっと記憶のそこに沈めていた過去を、自分の中からゆっくり引き出すのだった。

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