愛毒が溶けたら


「お、お願いしても、いいですか……?」

「ふっ、もちろん」



女子が見ればとろけるだろう笑みで、勇運くんは二つ返事でOKしてくれた。その笑顔に魅入りながら……私の目は、唇へと目が行く。



――~っ、や……悪い。ちょっと近づいただけで、本当にするつもりは、



ふとした時に思い出す。

勇運くんと、キスした日のことを。



「どうした、冬音」

「な、なんでもない……っ」



病院の日から、キスの話が勇運くんから出ることはない。

むしろ平然としていて……あっけらかんとした態度で、当たり前のように私のことを「冬音」って名前で呼ぶ。


勇運くんが私に告白してくれたのは夢だったかな?って。そんな錯覚を起こすくらい、勇運くんは今まで通り勇運くんだった。
< 236 / 398 >

この作品をシェア

pagetop