愛毒が溶けたら

「わ、ぶ!?」

「中も特に何も無かったぞ。“この度は力及ばずすみませんでした”って、柴さんが言ってた」

「柴さんが謝ることじゃないのになぁ」



そして私が家に入って、しばらくして――



街中に、パトカーのサイレンが鳴り響く。

一台や二台じゃないと容易に分かるけたたましいサイレン音が、柴さんの言った通り「広範囲」の事故を物語っていた。



「にーちゃん、すごい数のパトカーだ!」

「そ……、そうだな……」



長い間、夏海と一緒にいたことで、電池が切れて来た勇運くん。

テレビの「速報ニュース」で、守人さん達も向かった現場の生中継を、夏海とカニ白目で見ていた。
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