愛毒が溶けたら

「うちの子は、ウチの子はー……っ!!」



だけど、今は柴さんしかお巡りさんが近くにいない。

お母さんの心情を察するにあまりあるが、いかんせん人手が足りない。そのため、お母さんのフォローをする人が誰もいなかった。



「れん、連ー!! 返事をして、連ー!!」



夏海のお友達――連くんの名前を、必死に叫び続けるお母さん。

その声は悲痛で、聞いているこっちが泣いてしまうほど、胸がしめつけられる。


だけど……ううん。


だからこそ、お母さんのこの声は、今がんばっている守人さんに届けてはいけない。

守人さんだって、今、とても頑張っているから。自分の弟が、こんな大きな看板の下にいるなんて――一ミリも想像もしたくないだろうに、そんな現実を前にしても、それでも頑張っている。

勇運くんと連くんを助けるために、自分の気持ちを押し殺しながら頑張っているんだ――



ガシッ



「連くんのママ!」



地面から足が離れなかった私は、グググと力を入れ、連くんママの元へと向かった。

そして泣き叫ぶママに、思い切り抱き着く。
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