愛毒が溶けたら
「は~……手のかかる兄貴だな」
挟まれている足を見ながら、ため息をつく。
足は挟まれているものの、感覚はある。血が出てないのが、不幸中の幸いだ。
だけど、時間が許すか分からない。
耳をすますと、ミシミシと、確実に板が動いている音がする。さっき兄貴は、この板を「看板」って言ってたな。
どうして看板が落ちてくるのか、怒りしか湧いてこない、が……。
「冬音たちが助かっただけ、良かったな……」
なぁ、冬音。
さっきの兄貴の顔を見たかよ?
――ウソつくな。兄貴だって、冬音を諦めたくないくせに
あの時の兄貴、「なんで分かった?」って。顔に、そう書いてあったんだぞ。
冬音が片思いをしている間は、冬音の傍にいようと思ったけど……兄貴も冬音を好きなんじゃ、俺は完璧に邪魔者だな。