たゆたう、三角関係
晴人の額から汗が流れ、それを手で拭う。ずっと笑顔だったけど、どこか堅苦しさが消えたようだ。

「俺、付き合って欲しいとか、ふじと実琴を離れさせたいとか、そんなことは思ってなくて、ただしっかりと振られて諦めたかったんだと思う。俺、実琴のこと好きなまま別れたせいですごく苦しかった。バカだった」

また最後に「好きだった」と付け加えた。

過去に雁字がらめになっていたのは晴人だ。私が一人自由に羽ばたいていく一方で、晴人はずっと高3の春で止まったままだったのだ。

私が別の大学を受験することを決めた時から、私の気持ちが離れていく未来がずっと見えていたのかもしれない。

私はそんなことに気付くこともなく未来に胸を弾ませるばかりで、晴人のことを振り返ることもなかった。

晴人の手の中から逃げたのだ。

少し晴人の苦しみが分かった気がした。

「でもまあ、ふじなら良かったよ。俺よりちゃんとしてるし、実琴は見る目あるわ」

彼は苦々しく笑った。立ち上がってまたこめかみの汗を拭う。

「じゃあな」と言って私に少し顔を見せた。ジージーと騒がしい蝉の声だけが残る。

晴人は私の前から去っていった。
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