別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
「ごめん。全然少しで終わらなかったな。キスで終わるつもりだったのに」
「謝らないでよ。私もしたくなっちゃったんだもん」
「その発言はヤバいだろ……」

 拓海は片手で顔を覆って、困ったようにしている。そうやって瞳の言葉で戸惑っている拓海がかわいい。

「ふふ。最近は拓海のほうが照れてる」
「違う。照れてるわけじゃない。必死に堪えてんだよ。誰かさんがすぐ煽るからな」
「本当のこと言ってるだけなのに」
「ああ、もうわかったから。平日にあんまり煽るな。ほら、また抱きしめてやるから、静かにしてこっち来い」

 もう一度背中から拓海に体を寄せたら、後ろから優しく包み込んでくれた。静かにと言われたが、瞳はまだ言い足りなくて、文句を言われるのを承知の上で、わざと正直な気持ちを口にしてみた。

「拓海、好き。キス以上も嬉しかったよ」
「お前、わざとやってるだろ」
「ふふふ。拓海がかわいい」
「ったく……もう疲れてるだろ? 今日はこのままもう寝よう」

 拓海のぬくもりに包まれながら眠ったせいか、瞳はとてもとても幸せな夢を見た。目覚めてしまえば内容はもう覚えていなかったが、幸せな感覚はまだ残っていた。その幸せの感覚は夢の中だけのものでもなくて、瞳は目覚めてすぐに自分を包むぬくもりからも味わったのだった。
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