別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
 その後も拓海は最初の宣言通りに瞳のことをこれでもかというくらい愛してくれた。今日は全部自分がやるのだと言い、瞳がこっそり家事をしようものなら、その場で熱い口づけを施され、強制的に休まされる。空いた時間にはしっかりと抱き込まれた状態で、永遠と瞳のどこが好きなのかを語って聞かされる。

 そして、何よりも瞳が愛されていると感じられたのは、拓海が時折我慢できないというように瞳の名を口にする瞬間だった。ただ名を呼ばれただけだが、そこには拓海の想いすべてが詰まっていた。瞳の名を呼ぶ拓海の声は優しくて温かくて、愛で溢れたものだったから。

 いつもの眠る前の会話で、拓海は今日の結果を聞いてきたが、瞳の答えはわかっていると言わんばかりにその表情は自信に満ち溢れている。

「俺にどれだけ愛されてるか理解できた?」
「これ以上ないくらい。拓海は私のことが大好きなんだね」
「はあ、その台詞めちゃくちゃ嬉しい。ようやくわかったか? そのままずっと自覚してろよ?」
「ふふ。わかった。拓海に愛されてるって思いながら暮らす」
「いい子。瞳はもう俺の一部だからな。瞳がいないと俺は俺でいられない」
「同じだよ。私も拓海がいないと私じゃなくなる。私の気持ちも伝わってる?」
「伝わってるよ。だって、俺と離れるのが嫌であんなに泣いたんだろ?」

 自分でもあんなに泣いてしまうとは思わなくて驚いたのだ。拓海とのそういう未来を想像しただけで、心が壊れてしまいそうなくらい痛かった。どれほど拓海を愛しているのか瞳自身強く自覚させられたのだ。

「うん。別れることなんてないって思ってたから。二人の仲が冷めてもその選択はしないと思ってた。だから、怖かった。そういう未来もあり得るのかもしれないって思ったら怖かった」
「俺もそんな未来があると思うと怖い。だから、そんな未来が訪れないように二人の気持ちを大事にしていこう? ずっと一緒にいられるように努力していきたい」
「うん、そうだね。頑張りたい。二人一緒の未来のためなら、きっと頑張れる」

 大げさな宣言なんかじゃなくて、本当に頑張れると思う。何よりも望む未来のためなら努力できる。

 頑張るための原動力は二人の愛だから、きっと大丈夫だ。
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