別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
「拓海。私はもう大丈夫だよ? 拓海がすごく怒ってくれたし、私はもう気にしてない。だから、私は戸田の謝罪受け入れるよ。拓海がどうするかは拓海に任せる。でも、私のことはあまり気にしないで?」

 瞳も拓海のためを思って行動してくれたのだろう。今の言葉も拓海が優と素直に向きあえるようにと考えてのことに違いない。

 拓海とて優をずっと許さないでいるつもりではない。それでもあのときの瞳の泣き顔が浮かぶたびにまだ胸が締め付けられる。優を許すにはもう少し時間が必要だった。

「……わかった。優……いったん謝罪の言葉だけは受け入れる。でも、まだ完全には許せない。しばらくはそっとしておいてほしい」
「わかった。本当にごめん。俺、『関係は簡単に壊れる』って拓海の言葉が痛いほどわかったんだ。これからはもっとちゃんと考えてから行動する。本当にごめん」
「ああ……ちゃんと奥さんのこと大事にしてやれよ?」
「うん。じゃあ、俺らはもう出るよ」

 そのまま席を立とうとする優と由美を拓海は引き留めた。

「……飯食うくらい、いいよ。まだ食べてないんだろ?」
「……ありがとう。ありがとう、拓海!」

 優と拓海はほとんど話さなかったけれど、女性三人の明るい笑い声がその場を明るくしてくれた。拓海たちは思ったよりも穏やかなランチタイムを過ごし、拓海と優は少しだけ雰囲気を柔らかくしてから別れた。すぐに元の関係にとまではいかないが、それでも優と笑い合う日を想像できるくらいには拓海の心は晴れていた。
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