別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
 拓海は高校生のころに後輩の女の子から告白されて一年間だけ付き合ったことがあるから、恋愛未経験というわけではなかった。けれど、自分からこうしてここまで惹かれるのは初めてのことで、拓海はどうにかして瞳との接点を持とうと必死だった。その場限りで終わってしまうのは嫌だった。

 でも、初対面でいきなり連絡先なんて聞いたら気持ち悪いだろうし、どうやって距離を縮めればいいのかわからなくて拓海は頭を悩ませた。このままこのサークルにいれば徐々に近づけるかもしれないと思う反面、瞳がずっとこのサークルにいる保証はないから、何もしなければもう二度と会えなくなるかもしれないとも思う。やはり今連絡先を交換すべきかと思い悩んでいた拓海だが、瞳の連絡先は優と下山のおかげであっさりと入手できてしまった。優も下山も誰とでもすぐに交流できるタイプの人間だったから、あっという間に四人の連絡グループができていたのだ。

 拓海が優に感謝することなど滅多にないのだが、このときばかりは優に深く感謝したのだった。
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