別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
「お前らかわいいな。瞳、聖。折衷案ってことで」
「「なっ!?」」

 瞳と聖は声を揃えて叫んでいた。拓海が瞳と聖それぞれの頬にキスしたのだ。

「ちょっと聖の前で何してんの!?」
「なんで俺にまですんだよ!?」
「ははっ、いいじゃん、ほっぺくらい」

 拓海は随分と楽しそうに笑っている。完全に瞳と聖をからかって楽しんでいる。さすがにこのままやられっぱなしではいられない。聖もおそらくは同じことを思ったのだろう。聖と目が合って、なんとなく互いの考えを感じ取ると、二人は黙って頷き合った。

「聖、ちょっと拓海捕まえて」
「任せろ、姉ちゃん!」
「あっ、ちょっ、お前ら卑怯だぞ。こんなときだけ手組むとかずるいぞ」

 聖に拓海を捕まえさせて、瞳は拓海をくすぐり倒した。きっと拓海が本気を出せば、聖の拘束を振り解くことなんて簡単だろうが、拓海は大人しく聖に捕まえられたまま、瞳のくすぐりを受けて悶えている。

「あははは! ごめん、ごめんって! はははっ! 終わり! もう終わり!」

 最後は三人ともお腹を抱えて笑っていた。こんなに笑ったのは久しぶりだ。瞳は、聖を思いきり楽しませてやれるのが嬉しかったし、拓海とこんなふうに楽しく過ごせるのも嬉しかった。聖の思いつきがきっかけだが、拓海を家に招待して本当によかったと瞳は思った。
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