別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
 瞳が風呂から上がれば、拓海は聖と遊んでくれていたが、瞳の姿を確認するとすぐにそろそろ帰ると言って車で帰っていってしまった。本当に瞳が風呂から出てくるのをただ待っていてくれたらしい。あまりにも優しい拓海のその態度に瞳の胸はトクトクと少しだけ速くて、心地いい鼓動を刻んでいた。

 拓海が帰る間際、瞳は「ありがとう」と拓海に礼を言ったが、それだけではまだ言い足りなくて、拓海が家に着いたであろう頃を見計らって、瞳は拓海に電話をかけていた。

『瞳? どうした?』
『拓海、今日ありがとう』
『いや、俺も楽しかったから』
『うん。聖すごく楽しそうだった』
『ああ』
『それに……拓海がたくさん優しくしてくれたから、私もすごく嬉しかった。本当に嬉しかったの。ありがとう、拓海』
『うん』
『それだけ言いたくて……運転で疲れてるのにごめんね』
『いや。電話くれて嬉しかった』
『うん。じゃあ、あの、おやすみなさい』
『ああ、おやすみ』

 拓海の声を聞いたら、じんわりと心が温かくなった。とても満たされた心地だ。

 ずっと一人で頑張らないといけないと気を張っていたが、今は拓海のおかげで肩の力が抜けて楽になっている。きっと明日からはもう少し楽に過ごせるだろう。

 今日一日本当に拓海は瞳のことをたくさん気にかけてくれて、とてもとても嬉しかった。だから、今度は瞳が拓海のために何かしてあげたいと瞳は心からそう思ったのだった。
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