別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
 二人のこれからの未来に光が差したような気がして、拓海はとても明るい気持ちになれた。でも、この日はそれだけではなくて、大層情けない気持ちにもなった。瞳のことをちゃんと思いやれていなかったことに気づいたというのもそうだが、今の瞳の苦労に気づいてやれていなかったことが情けなかった。

 自分の実家で自分の家族と住むのだから、瞳は何も困ることなんてないと思っていた。瞳も羽を伸ばせていいだろうくらいに思っていたのだ。でも、瞳の告白を聞いてそんな考えは間違っていたとわかった。

 よく考えればわかったことだ。仕事もあるのに、いきなり中学生の面倒を一人でみなければならないなんて大変に決まっている。瞳のことだから家族を預かる身としての責任も感じているはずだ。聖を守らなければならないと気負っていることだろう。本来ならば夫である自分がフォローすべきなのだろうが、瞳を思いやれていなかった自分に瞳が頼ることなんてできなかったはずだ。そのことが本当に情けなかった。

 瞳が涙する姿を見て拓海は思ったのだ。彼女を守りたいと。頑張りすぎてしまう瞳が羽を休められる場所でありたいと、そう思った。瞳がいつでも頼れるように、もっと瞳に対して誠意をもって接していこうと拓海は誓ったのだった。
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