別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~

4. 高まる想い

 週末同居が始まってからというもの、拓海はそわそわと落ち着かない日々を送っていた。週末が待ち遠しくてたまらないのだ。あまりにも浮かれすぎて、自分の気持ちを持て余してしまっている。

 そんな状態の拓海に、優から飲みの誘いが来て、拓海は持て余しているこの感情を優に聞いてもらって発散しようとその誘いに快く乗ったのだった。



「最近、瞳がかわいく見えるんだよ」

 拓海は挨拶もそこそこに自分の感情について語りはじめた。

「は? 何お前惚気? 十年以上一緒にいといて今さら何言ってんだよ」
「こう無性に抱きしめたくなるっていうか」
「へー、おめでとう」

 優は心底どうでもいいという雰囲気を出している。

「お前、ちゃんと聞けよ」
「いや、だって新婚でもないのに、惚気話聞かされても困るんだけど」
「そういうことじゃないんだよ。だから……ずっとそんな感じじゃなかったんだよ」
「は?」
「ほら、前にも言っただろ? いるのが当たり前の家族になってるって。だから、こういう気持ちにはならなくなってたんだよ」

 あのときは、一緒にいるのが当たり前の存在になっていて飽きることなんてない、と言っていたが、今はそんなものではない。瞳に惹かれてやまないのだ。

「あー、女に見えないってことな」
「いや、そこまでは言わないけどさ。まあ、あまりかわいいとかは思わなくなってたんだよ。でも、最近付き合いはじめのころみたいになってて。瞳も瞳で急に照れるようになって、めちゃくちゃ男心くすぐられるんだよ」
「あっそう」
「真剣に話してんだから、聞けよ」
「んなこと言われても、俺はそれを聞いてどうすりゃいいわけ?」
「どうって……俺はどうすればいい?」

 絶対に優には向かない相談までしてしまって、拓海は自分で自分に驚いた。あまりにも心を動かされておかしくなってしまっているようだ。
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