別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~

2. 懐かしい場所で

「姉ちゃん、今日友達と遊びに行く」

 朝の家事をこなしていれば、聖が突然そんなことを言いだした。

「え、今日? 何時に?」
「十時」

 今は九時半だ。あと三十分しかない。

「十時ってもうすぐじゃん。なんでもっと早く言わないの」
「だって、さっき連絡来たから」
「えー、そうなの? お昼ごはんはどうするの?」
「皆でお好み焼き食べにいく」
「ああ、あそこね。わかった。ちょっと待って」

 この辺の学生がよく利用しているお好み焼き屋があるのだ。瞳も昔はよく友達と食べにいっていた。今も変わらず学生に愛されているのだろう。

「はい。お昼代」
「ありがとう、姉ちゃん」
「いい? お昼代だからね? ちゃんとお昼食べなさいよ?」
「うん」
「帰りは何時になるの? あんまり遅くなったらダメだよ?」
「うん。たぶん、五時くらいに帰る」
「なら、よろしい。聖、帰ってきたら、ちゃんと拓海に謝りなよ? もう家出ちゃってるだろうから」
「うん、わかってる」

 今日は土曜日で拓海がこちらへやってくる日だ。拓海はいつも十時過ぎに来るから、この時間だとすでに家を出ているだろう。家を出る前に連絡できれば、自宅でゆっくりしてもらうこともできたが、今からじゃ間に合わない。拓海には申し訳ないが、今日はこっちの家でのんびり過ごしてもらおうと瞳は思った。
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