月花は愛され咲き誇る
 それにしても、と鈴華を盗み見る。
 いつも以上に着飾っている鈴華に、これは本当に接待のためだけの身支度かと疑問を抱く。
 これでは長も慌てるはずだ。

「何を見ているの? 私の指示はそれだけよ。初めに用意する料理などは決まっているでしょう? さっさと準備に取り掛かりなさい」

 嫌悪も露わに眉を寄せた彼女に追い立てられ、香夜は鈴華の部屋を後にする。
 そうして準備が整えられて行き――運命の宴がはじまった。

***

 舞は月がある程度高くなってから行われた。
 料理と酒が振る舞われ、丁度ほろ酔い気分となった頃だろうか。
 香夜も料理や酒を裏で運びながら、合間にその様子を見ていた。

 扇を持ち、ゆるりとした舞はその技量も分かりやすい。
 しっかり教えられているとはいえ、年の瀬に披露する者以外は誰かに見せる機会など無い。
 故に、香夜のように結界すら張れない娘達の舞は普段目にするものより見劣りしていた。
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