月花は愛され咲き誇る
 姿が見えなくなったことでほっと息をつく香夜だったが、襖の向こうから僅かに声が聞こえて耳をそばだてる。

「炯、困った……」

 燦人のものと思われる言葉に、やはり何か思うところがあったのではないかと心に壁を作る。
 やはり自分が婚約者では困ることがあるのだろう。
 覚悟を決めて言葉の続きを待っていると……。

「私の婚約者が思っていた以上に可愛すぎる」
「っ!?」

 作ったばかりの心の壁がぶち壊されるほどの衝撃的な言葉に、香夜はまた熱が上がってくるのを感じた。
 あまりにも気恥ずかしくて、誰も見ていないのに布団を頭から被ってしまう。

「はぁ……良かったですね」

 襖の向こうから、炯の呆れたような声が聞こえた。
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