女流棋士はクールな御曹司と婚約したい
3章 予選
○大光建設杯清麗戦、昨年11月から始まった予選。

第1回戦から第4回戦を順調に勝ち上がってきた桜花。

6月某日、予選第5回戦。

吉野桜花女流4段 対 清水千代子女流7段。

(吉野桜花、グレーブレザー、丸襟ブラウスにリボンタイ、チェックスカートの制服姿。桜花は対局の時の服装は制服と決めている。清水千代子35歳、黒ぶちメガネ、肩くらいまでのボブ髪、地味で暗い感じの女性)

桜花先手、局面は終盤にして優勢なのは清水。

だが桜花は持ち時間を12分残しているのに対し、清水は持ち時間を使い果たして1分以内指しになっている。

視聴室には桜花の師匠端島と弟子萩尾4段、翡翠の顔もある。

後手清水が3六飛車を指す。

間をおかず先手桜花が角で歩を取る。

後手清水が4御銀で飛車取りに出る。

先手桜花はすかさず1六飛車で飛車を逃がす。

後手清水は1分ギリギリまで考え3四銀、角前に指す。

先手桜花は持ち時間12分フルに考え、7三銀を確信を持ち、力強く指す。

パチーン、盤が小気味良く鳴る。

後手清水は桜花が角を逃さず7三銀と指した盤上を睨みつけ、次の1手を探す。

「10秒…20秒…」

無情に秒読みが進む。
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