課長のケーキは甘い包囲網

「はい、頑張ります」

「田崎、誕生日おめでとう」

 課長は私の頭をなでてくれた。でもそのまま私の頭を引っ張っておでこの上にキスを落とした。

「え?」

「このキスがプレゼントだ……俺のキスは変なプレゼントより高いぞ」

「な、何ですか、それ……」

「まあ、おでこだから許せよ。俺は五年ぶりにケーキが焼けた。すごく嬉しいんだ。そのきっかけをお前がくれた……ありがとう」

「……ど、どういたしまして」

 課長の照れたような微笑みを見て、目がそらせなかった。とても素敵だったのだ。

「もう二十二時だ。さあ、明日も仕事だ。先にシャワー行ってこい。後の片付けは俺がやってやる。誕生日だから特別だ」

「……はい。お言葉に甘えます。ありがとうございます」

「ああ」

 課長のこと意識してしまいそうな自分がそこにいた。赤くなった頬を押さえて急いで部屋へ戻った。

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