初恋の音色

その日も遅くまで図書室で勉強して家に帰ろうとしていた時、音楽室からピアノの音が聞こえてきた。
自分の他にまだ残っている生徒がいたのか。
足を止めて覗いてみると、男子生徒が弾いていたようだ。
なんの曲かはわからないが、心に染みるいい曲だと思った。
しばらく聞いていると演奏が止まった。
ピアノから顔を上げた彼は私の方を見て手招きした。
気づかれていたのか。
音楽室のドアを開けて中に入った。
「あの、気が散りましたか?」
「大丈夫」
彼は柔らかい笑顔で答える。
怒っているようではなかったので、安心した。
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