【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく

12.元大聖女、退屈を持て余す

 健やかな日々。
 日の出と共に目醒め、夜の帳が落ちれば眠るという、ひどく人間的な生活。

 それを送れるのがどれだけ幸せなことかを、私は向こうの国で身に染みて感じていた。

 なんせ大聖堂の治療所には日々多くの患者が担ぎ込まれてくる。
 その責任者たる私にほとんど休む余裕はなく、もはや我が家の如くそこへ留まり続ける毎日。終わらない仕事の日々は私の精神をきっと強く圧迫していた。

 あの時はいつだってこう思っていた。
 もし、この役割から解かれたなら、私はもう一生働くまい……!
 そう、固く固く胸に刻んでいたのだ。

 それからしばしの時が経ち、今私がいるのは夢のような環境。
 毎日が休日で、どう過ごそうと誰にも左右されない自由がそこにはある。
 それはまさしく理想の日々。私はようやく楽園を手に入れた……。
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