【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「心配ありません、ミーミル様もご存じでしょうが、この者が陛下の御病気の治療を成し遂げたのですよ。彼女に我らを害する意思はありません」
「ほんとう……?」

 ベッカーは基本偉そうだけど、その実彼の心は細やかな気遣いに溢れている。殿下がセーウェルトに戻ろうとした時も、必死に止めている様子だったし、基本世話焼きな人なんだろうなと思う。だからきっと王女も懐いているのだ。

 彼の言葉でやっと警戒が少し解けたのか、王女様は戸惑いの表情をこちらへと向ける。私はゆっくりと彼女の傍に寄り、跪くと両手を広げて微笑んで見せた。

「ほら御覧ください、ミーミル様。私はあなたを傷つけるようなものは何にも手にしておりませんわ。ベッカー医師に頼まれて、あなた様の御病気がよくなるように遣わされただけですから。お好きなだけお調べくださって結構ですよ」
「……触っても怒らない?」
「怒りませんとも」

 彼女はベッカーから離れると、ゆっくりと私の手を握った。
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