【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく

15.元大聖女、薬草園に連れて行かれる

 王女様の症状が落ち着いた後も、私は引き続きベッカーに頼み込む形で宮内医療棟での仕事をさせてもらっていた。

 仕事といっても、そんなに大層なものじゃないけれど。
 緊急の患者や彼らの手では治療がままならない、もしくは回復が遅れている患者を聖女の力で癒すだけ。大聖堂で勤めていた頃とは比較にもならないほど楽させてもらっている。

 その割に結構なお給金まで支払われる。
 この間の王女の件の働きも認められ……たった今、手渡されたのがまさにその給料袋だ。

(えへへ~……何買おっかな)

 袋から一枚の、ジュデットで流通している金ぴかの高額通貨を取り出して眺めた私の顔に、大きな笑みが浮かぶ。

 「何だ? 金が欲しかったなら陛下に言えばいくらでも報奨として用意して下さるだろうに。ふわぁ……」

 そんな私を眺め、欠伸を出したのは、医師長室の奥に座るベッカー。彼ってば、人づてに私を呼び出したくせに、机に突っ伏して寝こけていたんだよ。
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