【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく

18.元大聖女、誘われる

 暮らす場所が変わっても、生活のリズムというものは案外変化しないものだ。

 私は大体朝六時に起き、かるく顔を洗って部屋で昨日教わった知識の復習を行う。天才ではあるまいし、地道な反復は不可欠だから。なので睡眠時間はさほど長く取らない。それでも、セーウェルトに居た頃と比べると体調は雲泥の差があった。

 そこからはミーヤとメイアが部屋に来て身支度を整えてくれるので、しばし忙しくなる。

 あまり服装に頓着しない私は彼女たちに交代で朝の準備を任せることにした。借りている衣装は華美なものも多く着慣れなくて恥ずかしいけど、ここは王宮だから多少のお洒落は必要だ。素人が頭を悩ますよりも、手慣れた侍女たちの方が余程うまく整えてくれる。

 次いで最近通例となってしまっているのが、王族一家との朝食だ。王宮にある専用の食堂に顔を出し、なぜか国王夫妻や王女と席を共にさせていただいている。粗相が出ないか心配ではあるが、セーウェルトでの話を聞きたいとあまりにも熱心に請われては断れるものも断れない。

 私ができるのは気候がどうだとか、食事の味はこちらよりやや薄口であることとか、そんな他愛もない話だけ。
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