【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 私はとんでもない事を言い出すミーミル様を下ろすと、血が上った自分の顔を抑える。そんな風に他人から言われると、例え冗談だと分かっていても変な意識が頭をもたげる。

(ないないない! 私がクリスフェルト殿下と? あーないない、絶対ないから!)
「ねえ、お母様ダメなの? もしお兄様がエルシアと結婚すれば、セーウェルト王国と仲良くなるかもしれないじゃない。そうしたら、私向こうの国に行ってみたいの……彼らが飼っている変な動物をたくさん見に行きたい!」
「そうねぇ……」
「ねぇエルシア、お兄様と結婚して! 私をセーウェルトに連れてって! ねーえ!」
(無理だと思いますぅ……色々な意味で)

 必死に妄想を掻き消す私を自分の欲望に忠実なミーミル様が揺らす。
 王妃はそんな姿に気だるそうに、しかしどこか楽しそうに溜息を吐く。

 そこでしばらくこの騒ぎは収まらないと見たのか、給仕の方々がいそいそと食器を置き始めるが、本日はどうも胃にもたれる朝食になりそうだ。

 お転婆王女の無体の要求はなお、朝食の席が解散するまで続いた。
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