【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 その偉そうな態度はベッカー、と思いつつも、今の私は口答えする気力もない。

「返す言葉もないわ」
「ふんっ、らしくないな……。ところで、最近殿下の御機嫌があまり優れなくてな……。なにか心当たりはないか」

 一瞬私の手がピタリと止まり、その後すぐ掃除を続け出す。

「……知らない」

 そして集めたガラス片を捨てに行こうとした私をベッカーは引き留め、また一つ鼻を鳴らして告げる。

「付いてこい。どうせそんな体たらくでは仕事にならん」
「ちょ、ちょっと……どこへ?」

 掃除用具をその場に置き、腕を引っ張られた私はベッカーに誘われるまま、その場から移動する。

 どうやらそのまま城から出るらしく、彼はそのまま門衛に挨拶すると、正面の大門を潜っていく。勝手に城から出て大丈夫かという不安はあったが、目的地は存外近くにあった。
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