【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく

30.元大聖女、満足する

「懐かしいな、ここに来るのは……」

 その食堂は王宮の庭園の脇に面していて、よく陽が当たる。
 人目に付かないようガードしてくれたミーヤとメイアに礼を言うと、私は声に緊張と懐かしさを滲ませた殿下を連れ、その扉を静かに開けた。

 晴れた日はいつもするように、本日も陛下たちは、外のテラス席に座って談笑をしていた。
 その姿を殿下はじっと眺める。

「私は……いいのかな、あの中に混ざっても」
「今さら何を言ってるんですか? 行きますよ!」
「ま、待ってくれよ……」

 埒が明かないと殿下を引っ張っていく中、私たちの姿を一番に気付いたのは陛下だ。しかし驚いたりすることはなく、自然に私たちを迎え入れてくれる。

「おお、クリスよ、お前がこの場を訪れるとは珍しい。じゃがよいことじゃ。早く座るがいい」
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