【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく


 その後リリカを呼び出し、臨時的に大聖女を他の者に任せて大聖堂を連れ出した。

 治療所にて悄然とし、かかしの様に突っ立っていた彼女は見る影もなかったが、しかし姉の話を聞くと瞳の光を取り戻し、妙な本一冊を片手に同行を快諾した。そして私たちはの身柄は今ここにあるというわけだ。

「姉様、見てなさい。今度こそあんたの全てを奪ってやる……」

 またぶつぶつとリリカが呟いている。その瞳に灯るのは、家族が生きていたことに対する安堵などではなく、本気の嫉妬と恨みの感情だ。私の事など眼中にすらないようなその様子には、彼女と出会った頃の面影もない。

(私は、間違いを犯してしまったのか……?)

 あれ程優しかったリリカの豹変ぶりを目にし、私は自分の浅はかさを思い知る。今のリリカに私への愛は感じられない。きっと女の心中には、男には理解できない行動原理が組み込まれているのだ。

 隣に座るリリカが、ふいに人間とは別の生き物に思え、背筋が凍る。
 私は今更悔いる気持ちを胸に浮かべ、しくしくと痛みだした胃を押さえるとそっと目を閉じ、眠った振りをしたのだった。 
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