【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「それがまあ、色々と先方にも都合がございましてな。本決まりになった際には、必ず招待状を送らせていただく。そのためにも、この大陸における魔族たちのより一層の認知に、どうかご助力を」
「それはもちろん。こちらも何かあれば頼りにさせていただきますぞ。ではまたいずれ」

 そんな約束の後、フィーゴ殿は他にも用事があるのかすぐに去ってゆき、儂は今話題に出たばかりの息子の姿を頭に思い浮かべた。
 
 今クリスも、儂と同じように国と他国の間を精力的に往復している。
 魔族の存在を人々に認めてもらい、人々から我らへの恐怖を取り除くために。
 だが、後数年の内に我が国がセーウェルトと国交を結べる見込みはかなり薄い。
 
 それでも……可愛い一人息子が、やっと心から大切だと思える女性を見つけたのだ。出来る限り良い状態でクリスフェルトにこの国を引き継いでやるためにも、在位中にやれることは全てやっておかなければ。この国の元首としても、クリスの父親としても。

(ふっふっ……せっかくまた、遠慮なく語り合える関係に戻れたのだからな)

 そう思えば、物珍し気な視線を向けられるのも苦にならない。国交を結べていない国はまだまだあるのだ。儂は各国の主たちに挨拶するため笑顔を作ると、自分から歩み寄っていこうと疲れた体に鞭を入れた。
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