【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「なるほど……ではエルシア嬢。こうして私たちに陽炎草を渡してくれたということは、これを使わせてくれるということでいいんだよね? もちろん、治療の後だが私たちにできる限りの望みは叶えるつもりだ。願う条件があるならば提示して欲しい」
「もし知っているならば、処方の方法も教えてもらえるとありがたい。一般的なものしかこちらには伝わっておらんのだ」

 ベッカーもちょっと不本意そう顔だけれど、こちらに腰を折った。
 プライドの高そうな彼が頭を下げるところを見ると、本当に思ったより危険な状況にあるのかもしれない。

 ならば私もすることは決まっている。条件云々は後回しでいい。

『私が薬を作ります』
「なんだと? そんな病み上がりの体では無理だ!」

 紙に自分の意思を示し、ふかふかの天蓋付きベッドから這い出る。
 ベッカーが止めた通り、まだ満足に体は動かせない。
 それでもせめてもの気付けにと薬箱にあった錠剤をいくつか水で流し込み、意思だけははっきりと……患者の元に連れて行って貰えるよう身振りで頼み込む。
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