忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―
13.知らない誰か
ダンスサークルに入って、数日。
「亜美ちゃん、それこっちお願いしていい?」
「はい」
「ありがと。そこ置いといてくれたら大丈夫」
寧々に言われた通り、亜美は荷物を壁際へ運んだ。
練習前の部屋は、今日も慌ただしい。
音響の準備をする人。
鏡の前で身体をほぐす人。
集まって話している人。
その間を行き来しながら、亜美は寧々に教えてもらったことを一つずつ覚えていた。
「次は……」
「亜美ちゃん」
「はい」
「そんな緊張しなくて大丈夫だよ」
「……してます?」
「してるしてる。顔が真剣」
寧々が明るく笑う。
「最初なんだから、分かんなくて当たり前。何でも聞いてね」
「ありがとうございます」
「あと、敬語もそのうち取れたら嬉しいな」
「……頑張ります」
「そこ頑張るところなんだ」
寧々がまた笑った。
亜美もつられて少し笑う。
寧々はよく笑う人だった。
明るくて、話しやすい。
亜美が分からないことを聞いても、嫌な顔をしない。
まだ知らない人ばかりの場所で、その明るさに少しだけ助けられていた。
「これ、どこ置くんだっけ?」
少し離れたところから声がする。
「あっちじゃない?」
「鉄、持って」
「光成が持ってきたんじゃん」
「いいじゃん、半分持ってよ」
「んー、いいよ」
「よし!」
二人の男子学生が、一つの荷物を持って歩いていく。
「…………」
亜美は少しだけその背中を見た。
いつ見ても。
二人でいる気がする。
「あの二人、仲いいですね」
「ん?」
寧々が亜美の視線を追う。
「ああ。うん。だいたいいつも一緒にいるよ」
「そうなんですね」
「ほんとずっとあんな感じ」
「寧々、聞こえてるぞー!」
光成が振り返る。
「聞こえるように言ったもん」
「悪口?」
「褒めてる」
「マジ?」
「たぶん」
「たぶんじゃん!」
「ふふ」
鉄が隣で笑う。
「光成、うるさいよ」
「鉄、お前どっちの味方だよ」
「どっちでもいいかな」
「一緒に荷物持ってんだから俺の味方しろよ!」
「それ関係ある?」
「ある!」
「そうなの?」
「そうなの!」
寧々が笑う。
亜美も小さく笑った。
最初に見学へ来たときより。
少しだけ。
この場所の空気が分かるようになってきた。
「亜美ちゃん、それこっちお願いしていい?」
「はい」
「ありがと。そこ置いといてくれたら大丈夫」
寧々に言われた通り、亜美は荷物を壁際へ運んだ。
練習前の部屋は、今日も慌ただしい。
音響の準備をする人。
鏡の前で身体をほぐす人。
集まって話している人。
その間を行き来しながら、亜美は寧々に教えてもらったことを一つずつ覚えていた。
「次は……」
「亜美ちゃん」
「はい」
「そんな緊張しなくて大丈夫だよ」
「……してます?」
「してるしてる。顔が真剣」
寧々が明るく笑う。
「最初なんだから、分かんなくて当たり前。何でも聞いてね」
「ありがとうございます」
「あと、敬語もそのうち取れたら嬉しいな」
「……頑張ります」
「そこ頑張るところなんだ」
寧々がまた笑った。
亜美もつられて少し笑う。
寧々はよく笑う人だった。
明るくて、話しやすい。
亜美が分からないことを聞いても、嫌な顔をしない。
まだ知らない人ばかりの場所で、その明るさに少しだけ助けられていた。
「これ、どこ置くんだっけ?」
少し離れたところから声がする。
「あっちじゃない?」
「鉄、持って」
「光成が持ってきたんじゃん」
「いいじゃん、半分持ってよ」
「んー、いいよ」
「よし!」
二人の男子学生が、一つの荷物を持って歩いていく。
「…………」
亜美は少しだけその背中を見た。
いつ見ても。
二人でいる気がする。
「あの二人、仲いいですね」
「ん?」
寧々が亜美の視線を追う。
「ああ。うん。だいたいいつも一緒にいるよ」
「そうなんですね」
「ほんとずっとあんな感じ」
「寧々、聞こえてるぞー!」
光成が振り返る。
「聞こえるように言ったもん」
「悪口?」
「褒めてる」
「マジ?」
「たぶん」
「たぶんじゃん!」
「ふふ」
鉄が隣で笑う。
「光成、うるさいよ」
「鉄、お前どっちの味方だよ」
「どっちでもいいかな」
「一緒に荷物持ってんだから俺の味方しろよ!」
「それ関係ある?」
「ある!」
「そうなの?」
「そうなの!」
寧々が笑う。
亜美も小さく笑った。
最初に見学へ来たときより。
少しだけ。
この場所の空気が分かるようになってきた。