忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―
 自分にとって。

 幸也と初めて会った日は。

 ずっと忘れられない日だった。

 初めて。

 あの音を聴いた日。

 初めて。

 幸也と話した日。

 そして。

 誰にも言っていない秘密を。

 自分だけに教えてもらった日。

 でも。

 幸也にとっては。

 たくさんある日の中の。

 ほんの一日なのかもしれない。

 そう思うこともあった。

 だから。

 幸也の中にも。

 高校生だった自分がちゃんと残っている。

 それが。

 嬉しかった。

「ちょっと待って」

 幸也がスマートフォンを取り出す。

「確か……」

 画面を確認して。

 亜美へ向けた。

「ここ」

「…………」

 亜美は幸也のそばへ寄る。

 画面を見る。

 近い。

 そう気づいた途端。

 さっきまで普通だった呼吸が。

 少しだけ浅くなる。

「…………」

 時間。

 見なきゃ。

 亜美は画面の数字に意識を向ける。

 頭の中で。

 自分たちの予定と照らし合わせる。

 ダンスのステージ。

 そのあと。

 片付け。

 時間は――

「……行ける」

「ん?」

 幸也が亜美を見る。

 近い。

 目が合って。

 亜美は一瞬だけ固まった。

 でも。

 嬉しさの方が勝った。

「見に行けます」

「わざわざ?」

「行きたいです」

 すぐに答えた。

 幸也が少し目を丸くする。

「そんな見たい?」

「見たい」

「俺が弾いてんの、いつも見てるじゃん」

「違うから」

「何が?」

「ステージは違う」

「そう?」

「そうです」

 亜美は。

 さっき見た幸也を思い出した。

 いくつもの音の中で。

 楽しそうに笑っていた。

 いつも自分が見ている幸也とは。

 少し違った。

 あの姿を。

 今度はちゃんと。

 最初から最後まで見たい。
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