忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

20.告白の相談

 文化祭まで。

 あと数日。

 亜美はスマートフォンのカレンダーを見ながら、小さく息を吐いた。

「…………」

 近づいている。

 楽しみにしていた日が。

 幸也のステージ。

 この前、幸也本人から出演すると聞いて。

『絶対見に行く!』

 そう言った。

『待ってる』

 幸也は笑ってくれた。

 思い出すだけで。

 胸の奥が、少しだけ温かくなる。

「…………」

 楽しみ。

 早く見たい。

 ステージの上にいる幸也を。

 あの音を。

 でも。

 文化祭が近づくにつれて。

 楽しみとは別の気持ちも。

 少しずつ、大きくなっていた。

 ――このままでいいのかな。

 亜美はスマートフォンの画面を消した。

 ずっと。

 好きだった。

 高校生の頃。

 大学見学で初めて会った日から。

 綺麗な音を鳴らす人。

 少し寂しそうに笑う人。

 自分にだけ。

 秘密を教えてくれた人。

 もう一度会いたくて。

 もう一度、あの音を聴きたくて。

 気づけば。

 誠星大学へ行きたいと思うようになった。

 受験勉強をして。

 合格して。

 同じ大学へ来て。

 また会えた。

 今では。

 部室へ行けば話せる。

 あの音も聴ける。

 名前を呼んでもらえる。

 高校生だった頃より。

 ずっと近くにいる。

 それなのに。

「…………」

 何も。

 変わっていない。

 幸也は先輩で。

 自分は直充の妹。

 それ以上でも。

 それ以下でもない。

 このまま。

 ずっと。

 幸也先輩を見ているだけなのかな。

 そう思った瞬間。

 胸の奥が。

 きゅっと狭くなった。
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