忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

【第四部】24.舞台袖

 文化祭当日。

 大学の中は、朝からいつもと違っていた。

 人の声。

 音楽。

 模擬店から漂う甘い匂い。

 色とりどりの看板。

 どこを見ても人がいて、笑い声が聞こえる。

 その中を、

 亜美は走っていた。

「すみません、通ります……!」

 両手には、ダンスサークルで使う荷物。

 朝からずっと忙しい。

「亜美ちゃん、それこっち!」

「はい!」

 先輩マネージャーに呼ばれて、亜美は荷物を運ぶ。

「飲み物は?」

「さっき確認しました。大丈夫です」

「ありがと! じゃあ次、タオルお願い」

「はい!」

 返事をして、

 また動く。

 少し離れたところでは、寧々も出演者の荷物を確認していた。

「寧々先輩」

「ん?」

「こっち終わりました」

「ありがとう。じゃあ亜美ちゃん、次これお願いしてもいい?」

「はい!」

「急がなくて大丈夫だからね」

「分かりました」

 亜美は受け取ったものを抱える。

 走って。

 運んで。

 確認して。

 また呼ばれて。

「…………」

 忙しい。

 でも、

 それでよかった。

 忙しい方が、

 何も考えなくて済むから。
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