忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

【第五部】29.離れていく少女

 文化祭が終わってから。

 亜美は避けた。

 軽音サークルの前を通らないようにした。

 直充に用事があっても、部室には行かなかった。

 幸也を遠くに見つければ足を止め、気づかれる前に別の道へ曲がった。

「…………」

 会いたくないわけじゃない。

 本当は、会いたい。

 声を聞きたい。

 またあの音を聴きたい。

 それでも幸也に近づけなかった。

『群司が見てたってことは』

『他にも見てた人、いるかもしれないね』

 丈の言葉が浮かぶ。

 群司が見ていた。

 自分は知らなかった。

 もし。

 幸也も知っていたら。

「……っ」

 胸が苦しくなる。

 文化祭の前日。

 幸也に告白した。

 高校生の頃からずっと好きだったと伝えた。

 振られて。

 無かったことにしたいと、自分から言った。

 そのあと。

 丈のところへ行った。

「…………」

 もし知っていたら。

 幸也は、自分をどう思うんだろう。

 考えるだけで怖かった。

 だから今は。

 会わないことしかできなかった。
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