忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―
 店を出た。

 外はまだ明るかった。

 二人で駅まで歩く。

 付き合っていたときなら、手を繋いでいたかもしれない。

 今日は触れなかった。

 駅の前で、幸也が立ち止まる。

「じゃあ」

「……はい」

 亜美は幸也を見た。

 高校生の頃。

 大学見学で初めて見た人。

 キーボードを弾いていた人。

 もっと会いたいと思った。

 もっと話したいと思った。

 もっと知りたいと思った。

 初めて恋をした人。

「幸也さん」

「ん?」

「好きになってよかったです」

「…………」

 幸也が少しだけ笑った。

「俺も」

 それ以上は、何も言えなかった。

「じゃあね」

「……はい」

 幸也が背を向ける。

 亜美はその背中を見ていた。

 遠くなって。

 人の中へ消えていくまで。
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