忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―
 冬。

 勉強の合間、亜美は以前よりもいろいろなことを丈に話すようになっていた。

「先生」

「何?」

「大学生って、高校生と付き合える?」

「また急だね」

「気になった」

「誰の話でしょうね」

「……分かってるくせに」

「幸也」

「言わなくていい」

「聞いたの亜美じゃん」

「そうだけど」

 こんな質問も、いつの間にかできるようになった。

「先生」

「今度は何?」

「男の人って、好きじゃなくてもキスできるの?」

「…………」

「先生?」

「できる人はいるんじゃない?」

「先生は?」

「何で俺の話になるの」

「参考」

「何の参考だよ」

「いろいろ」

「便利な言葉覚えたね」

 丈が笑う。

 亜美も笑った。

 以前なら、こんな話をするだけで顔を隠していた。

 今だって内容そのものは少し恥ずかしい。

 でも。

 丈に話すことは、恥ずかしくない。

「ねえ、先生」

「うん」

「付き合ったら、どこまでしたら普通なの?」

「普通なんてないよ」

「また人による?」

「そう」

「そればっかり」

「恋愛なんてそんなもん」

「…………」

「何?」

「じゃあ」

 亜美は少し考えた。

「私が分からなかったら?」

「うん」

「先生に聞けばいい?」

 あまりにも自然に出た言葉だった。

 丈が一瞬だけ黙る。

「…………」

「先生?」

「うん」

 そして、いつものように笑った。

「聞けばいいよ」

「分かった」

 亜美は頷いた。

 学校のことも、恋愛のことも、男の人のことも、自分のことも。

 誰にも言いたくないことも。

 丈になら、話していい。

 もう亜美の中では、それが当たり前になっていた。
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