忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―
12.ダンスサークル
放課後。
「こっち」
「ほんとに?」
「たぶん」
「たぶん?」
「チラシに書いてあるから合ってると思う」
「それなら大丈夫かな」
「不安なら一緒に探して」
「群司についてく」
「じゃあ行こ」
群司が笑う。
亜美はその少し後ろを歩きながら、辺りを見回した。
授業で使う建物から少し離れた場所。
初めて歩く道。
知らない建物。
大学は思っていたよりずっと広くて、まだどこを歩いていても新鮮だった。
少し進むと、どこかから音楽が聞こえてくる。
「あ」
群司が足を止めた。
「ここじゃない?」
開いた扉の向こう。
大きな鏡。
床に置かれた荷物。
何人もの学生が、音楽に合わせて身体を動かしている。
「……すごい」
思わず声が出た。
揃っている。
速い曲なのに、一人一人の動きが音にぴったり重なる。
身体全体で音を追いかけているみたいだった。
「見学?」
突然声をかけられ、亜美は肩を揺らした。
「……はい」
振り向くと、背の高い男子学生が立っていた。
真面目そうな雰囲気なのに、どこか近寄りがたい。
けれど、話し方は思っていたより柔らかかった。
「一年?」
「はい」
「二人とも見学?」
「あ、俺はそうです」
群司が答える。
「私は付き添いです」
「付き添い?」
「はい」
先輩が二人を見る。
「彼女?」
「違います」
亜美が即答した。
「…………」
群司が黙る。
「友達です」
「ああ、そうなのか。悪い」
「いえ」
亜美は特に気にしていない。
群司は少しだけ亜美を見る。
「即答だったね」
「だって違うでしょ」
「そうだけど」
「何?」
「何でもない」
先輩が二人のやり取りを見て、少しだけ笑った。
「とりあえず入って。今は新歓期間だから、見学も多いし」
「ありがとうございます」
中へ入る。
途端に音が大きくなった。
身体に響く低い音。
床を踏む靴の音。
鏡の前で踊る人たち。
亜美は邪魔にならないように端へ寄った。
「群司」
「ん?」
「本当にやるの?」
「まだ見学」
「踊らないの?」
「何でちょっと楽しみにしてるの」
「見たいって言ったから」
「覚えてたんだ」
「当たり前でしょ」
「そっか」
群司が少しだけ笑う。
その顔を見て、亜美は首を傾げた。
「何?」
「何でもない」
またそれ。
最近の群司は、時々こういう顔をする。
何か言いたそうなのに、結局何も言わない。
けれど亜美も、それ以上は聞かなかった。
「こっち」
「ほんとに?」
「たぶん」
「たぶん?」
「チラシに書いてあるから合ってると思う」
「それなら大丈夫かな」
「不安なら一緒に探して」
「群司についてく」
「じゃあ行こ」
群司が笑う。
亜美はその少し後ろを歩きながら、辺りを見回した。
授業で使う建物から少し離れた場所。
初めて歩く道。
知らない建物。
大学は思っていたよりずっと広くて、まだどこを歩いていても新鮮だった。
少し進むと、どこかから音楽が聞こえてくる。
「あ」
群司が足を止めた。
「ここじゃない?」
開いた扉の向こう。
大きな鏡。
床に置かれた荷物。
何人もの学生が、音楽に合わせて身体を動かしている。
「……すごい」
思わず声が出た。
揃っている。
速い曲なのに、一人一人の動きが音にぴったり重なる。
身体全体で音を追いかけているみたいだった。
「見学?」
突然声をかけられ、亜美は肩を揺らした。
「……はい」
振り向くと、背の高い男子学生が立っていた。
真面目そうな雰囲気なのに、どこか近寄りがたい。
けれど、話し方は思っていたより柔らかかった。
「一年?」
「はい」
「二人とも見学?」
「あ、俺はそうです」
群司が答える。
「私は付き添いです」
「付き添い?」
「はい」
先輩が二人を見る。
「彼女?」
「違います」
亜美が即答した。
「…………」
群司が黙る。
「友達です」
「ああ、そうなのか。悪い」
「いえ」
亜美は特に気にしていない。
群司は少しだけ亜美を見る。
「即答だったね」
「だって違うでしょ」
「そうだけど」
「何?」
「何でもない」
先輩が二人のやり取りを見て、少しだけ笑った。
「とりあえず入って。今は新歓期間だから、見学も多いし」
「ありがとうございます」
中へ入る。
途端に音が大きくなった。
身体に響く低い音。
床を踏む靴の音。
鏡の前で踊る人たち。
亜美は邪魔にならないように端へ寄った。
「群司」
「ん?」
「本当にやるの?」
「まだ見学」
「踊らないの?」
「何でちょっと楽しみにしてるの」
「見たいって言ったから」
「覚えてたんだ」
「当たり前でしょ」
「そっか」
群司が少しだけ笑う。
その顔を見て、亜美は首を傾げた。
「何?」
「何でもない」
またそれ。
最近の群司は、時々こういう顔をする。
何か言いたそうなのに、結局何も言わない。
けれど亜美も、それ以上は聞かなかった。