佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋

「1人で帰っちゃうの?」

「…」

何も言ってくれない零士を更に抱きしめる。

「今日、まだ一度もキスしてないよ」

「知ってる。わざとだから」

「えっ?」

「俺も男なのよ。昨日の今日でキスしたら、触るだけで止められないよ。明日休みなことをいいことに、無理やりにでもしおりを抱き潰す自信しかない。だから、抱かれる気もないなら、煽らないで。明日またな」

腕にある手を振り解こうとする零士の表情は、しおりからは見えないのだが、我慢しているのだとわかる声に、しおりも決意する。

零士の前に周りこんで、背伸びをし腕を伸ばして零士の顔を掴み口付けた。

その瞬間、荷物ごと抱き抱えられて、共用廊下の壁側に追い詰められて、貪るようにキスが返される。

「はぁっ…俺の言ったことわかってるのか?」

「うん」

「どうしてほしいか言って」

鼻先を擦り、しおりに言わせようと催促するのだ。

「零士に抱かれたい」

よくできましたと、笑う笑顔に、キュンキュンと心が躍るしおり。

チュッチュッと、ここがどこかも忘れてキスを繰り返すしおり。

「…可愛いことするなよな」

それじゃ足りない男は、悩ましげに辛そうに唸る。
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