佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
「仲直りしに部屋行こう」
「うん。だけど、俺の取った部屋に行こう。スタンダードだと、壁薄いよ」
えっ?
耳を甘噛みされて、舌先で艶めかしくなぞられては、零士の言葉が本当なのかどうかも確かめる余裕もなく、プレミアルームの部屋に入るなり、淫らなキスと愛撫が始まる。
クイーンサイズのベットの上で、服を半分脱いだ状態で繋がる男女が、窓ガラスに映っていた。
服を脱ぐまも惜しんで、着たまま求めるほど余裕がない男。
繋ぎとめておかないと心配なのだ。
「…俺の側から離さないよ」
腹黒い感情で、卑怯な手段を使う。
ほどほどに抱き潰して、うっすらと意識のあるしおりに囁く。
「俺の子、産んでくれる?」
「うん、…零士の赤ちゃん欲しいね」
深く考えられない頭で答えてしまう。
ただ、いつか結婚して、自然とできたらという気持ちだったはずなのだ。
だが、男の思惑は違っていた。
言質をとったと薄ら笑う。
「ごめんね。時間なんてあげれない」
その呟き後に、零士は体を震わせて、しおりのお腹の奥にその意味を宿すのだ。
もう、あんな思いをするぐらいならと、零士の黒い愛情が暴走し、しおりが妊娠したと気づく頃には、雁字搦めに囲われた後だった。