澄ましたメイドのご主人様。


どこからの情報なのか。

もちろんお父さんだろう。

けれど,他の確認方法は無かったのかと,独特な身分確認に飲み込む。



「少々お待ちください」



少々とはどれくらいだろう。

この家すら,そんなに広くないですと涼しい顔をしそうなお金持ちの一家。

彼らの価値基準が,自分と同じとは限らない。

そう息をつき,それでも一歩も動かないまま姿勢を保つ。

すると,ものの数分で彼は戻ってきた。


『では,どうぞ』


どうぞ?

そう疑問に思うと,目の前でガチャリと言う音。

試しに押してみると,大きな扉は簡単に開いた。

自動……ロック……

緑の中で,唯一歩くために白いパネルの敷かれた道。

汚してしまわないかと自身の靴を気にしながら進むと,その豪邸の扉がある。

玄関まで大した労力の要らない家《うち》とは違い,これだけ広いとロック1つさえ自動でないといけないのだろう。

一応ノックをして,お邪魔しますと心で唱えながら,私は一歩を踏み入れた。
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